猫で多い歯科、口腔周囲の疾患

歯周病

犬や猫の口腔疾患の中で歯周病の発生率は最も多く、3歳以上の約80%が患っていると言われています。歯周病は腎臓病、肝臓疾患、心臓病などの全身疾患に関連することがあるため早期の治療および自宅でのデンタルケアを行うことが重要です。

症例1

処置前

処置後

症例2

処置前

処置後

顎関節脱臼

外傷により顎関節が脱臼した状態です。交通事故や落下により生じます。口が閉じられず、よだれがでている症状で来院されることが多いです。触診、頭部レントゲン検査にて診断し、鎮静・麻酔下にて脱臼した顎関節を整復します。処置後は柔らかいフードを1-2週間与えながら顎関節が安定するまで安静に経過を過ごして頂きます。

処置前

処置後

猫の尾側歯肉口内炎

口の中の粘膜が赤くただれ、激しい痛み、よだれ、口臭、採食不良、口を開いたときに痛みによる奇声を上げる、口を気にする仕草、口の周り触ろうとすると嫌がるなどの症状がみられます。重度の場合は飲食が難しくなり体重が減少していきます。

難治性の疾患で、口の中の激しい炎症の原因は細菌や自分の歯に対して過剰(異常)な免疫反応が起こっているのではないかと推察されています。猫エイズ・白血病ウイルスを保有していると難治性となることが多いです。内科治療と外科治療がありますが、内科治療単独での完治は難しく外科治療を行える状態であれば外科治療へと進みます。外科治療の方法は抜歯することです。全臼歯抜歯60%の治癒率、全顎抜歯80-95%の治癒率が望めますが、5-10%は改善がありません。そのため、内科治療を組み合わせて生活の質を維持することが治療目標となることもあります。

処置前

処置後

挺出(ていしゅつ)

歯の過剰萌出(ほうしゅつ)で、歯が伸びたようにみえます。高齢猫の上顎犬歯に多くみられ、動揺が重度になると歯の脱落(抜け落ちる)や閉口障害、口唇への損傷を生じることがあります。

歯周組織の損傷が激しい場合は、治療として挺出犬歯を抜歯、増殖して分厚くなった歯槽骨を除去し歯肉粘膜フラップを作成して抜歯窩を縫合します。

猫の吸収病巣

現在、原因は解明されておりませんが歯の組織が吸収されていく病態です。痛み、食欲低下、口を触られるのを嫌がる、出血などの症状がありますが、歯根部に発生した場合は無症状のこともあり、他の歯科治療時に発見されることもあります。歯科レントゲンを撮ることによりタイプ1から3に分類され、状態により抜歯、歯冠切除を行います。

好酸球性肉芽腫症候群

アレルギーや不整咬合による慢性刺激により発生することがありますが、原因は不明です。潰瘍が上唇に生じることが多く、痛みや不快感をしめすことはあまりありませんが、唇がめくれ上がって見えます。ステロイド剤や免疫抑制剤を用いて治療します。

左上唇に発生した潰瘍

 診療予約する