若齢でみつかる口腔内の異常

乳歯遺残

生後3週あたりから乳歯が生えはじめます。その後、永久歯へと生え変わっていきますが乳歯が抜けないと永久歯の発育に影響を与えてしまい、噛み合わせに不具合を生じることがあります(不整咬合)。また、残存乳歯と永久歯の間に被毛や歯垢等が付着し歯周病へと発展していきます。生後約7カ月を過ぎても乳歯が抜けない場合は抜歯する必要があります。生後6-7カ月齢時に歯科検診を受けることをおすすめします。

乳歯の遺残

上顎臼歯の乳歯遺残。物を噛むときに違和感を感じやすく、硬いものを噛んだ時に痛みを生じることもある。

残存乳歯にからまった被毛により、周囲の歯肉に炎症が起きている。

犬の下顎犬歯矯正

下顎乳犬歯(乳歯)が遺残することにより下顎犬歯(永久歯)が舌側に転位してしまうことがあります。舌側に生えた下顎犬歯は上顎の歯や歯肉、硬口蓋に接触し、痛みや炎症、不整咬合の原因となります。舌側に転位した犬歯根元に、抜歯した乳犬歯の一部を楔のように挿し込み永久歯の位置を矯正します。

矯正前

矯正後

欠如歯

本来あるはずの場所に歯が肉眼初見で確認できない場合があります。このような場合は歯科レントゲンを撮影して次の1~3を確認することが必要です。

  • 欠如歯(歯が存在しない)。
  • 未萌出歯(歯は存在しているがまだ生えていない)。
  • 埋伏歯。2と3の場合は状態により治療が必要となります。

上顎第二前臼歯の欠如歯。
同部位をレントゲン撮影すると歯が存在しないことがわかる。

過剰歯

正常とされる歯の本数よりも多いことを過剰歯といいます。過剰歯があることで歯周病リスクが高まる場合、噛み合わせに異常をきたす場合、口腔内を傷つける場合は過剰歯の抜歯を行います。生えていたとしても悪さをしなければ抜く必要はありませんが、抜かない場合は定期的に口腔内をチェックします。

含歯性嚢胞

歯の疾患や歯の萌出(ほうしゅつ)過程に関連してつくられる嚢状の構造物。埋伏歯に関連して発生することが多く、嚢胞が進行して拡大・膨隆していくと嚢胞周囲の顎の骨が破壊されていきます。また、隣接した歯にも影響を与えるため早期の治療が必要です。治療法は抜歯・嚢状構造物を摘出し歯肉を縫合します。

歯蓋

歯が分厚い線維質の歯肉で覆われて萌出できない状態。肉眼では見えない歯が歯科レントゲンを撮影すると歯肉の内部に歯があることがわかります。歯を覆っている歯肉を切除して歯を露出させることで正常な発育を促します。

歯蓋切除前

歯蓋切除後

変形歯

小型犬に多い歯根の収束を特徴とする歯の形態異常。副根管と呼ばれる歯髄腔への異常な連絡通路が形成され、その経路から口腔内細菌が入り込み根尖周囲病巣(歯の根元周囲の病巣)を形成することがあります。肉眼では判断がつかないことがあるため歯科レントゲンで診断します。

回転歯

歯が回転して生えており、隣接する歯との間に被毛・歯石・歯垢が沈着しやすくなります。歯ブラシ等を用いても清掃性が悪く歯周病へと発展しやすいため、状態によっては抜歯することがあります。

犬の上顎第3前臼歯の回転歯

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